IFSMA便り NO.56

オフィサーはベストのリーダーになれないのか?
Officers “don’t make the best managers”

(一社)日本船長協会 副会長 赤塚 宏一

 

LRO ニューストピック

 ほぼ毎日、ロンドンにある公益社団法人 日本海難防止協会ロンドン研究室から海事に関わる幅広いニュースが、その丁寧な要約/解説とともに送られてくる。ニュースの多くは日本海難防止協会 欧州代表の長谷部正道氏自身によるもので、日本財団の援助を受けて広く日本の海事関係者に送られているのである。カバーされる情報の範囲は海事・海洋の全てを含むものであり、膨大な量の情報を取捨選択し吟味し、それを要約し、解説を付して送ってこられる。そして原文がすぐ参照出来るようになっているのが貴重である。日本船長協会は日本海難防止協会の好意により、これらのトピックスから特に会員に興味のありそうな項目を月報に紹介している。
 筆者は基本的に毎日が日曜日の生活でそれなりに海外の海事関係情報には目を通しているが、その範囲は到底及ぶところではない。今や海外の海事・海洋情報はすべてこのLRO ニューストピックで事足りるのではないかと思われる。
 さて、昨年の12月21日に送られてきたトピックの中に「船員が陸上勤務に転職することに関する意識調査」というニュースがあった。これは本誌前号、すなわち第442号にも掲載されているのでご覧になったであろう。
 この記事については何処かで読んだ気がするので、調べてたところ英・蘭船舶職員組合の機関紙“T e l e g r a p h” 2017年10月号にOfficers “don’t make the best managers” と題する短い記事があった。これはL R Oニュースで取り上げられたトピックの一部を取り上げたものである。興味をひかれたのでネットで情報を拾い集め、主として船員に関する部分を再構成し紹介することとした。
 この調査は、世界的な海事・海洋分野における人材斡旋会社Faststream 社が主として英国を始め欧米人を対象として行ったものと思われるので、英国人船員の雇用制度は日本とはかなり違うし、また教育制度や社会制度も違うことを前提にしなければならない。その意味でこの調査報告が会員諸兄のお役に立つものではないかもしれないが、一方外国人船員との混乗、あるいは外国人船員の管理といった面からは参考になる部分もあるのではないか。

 

Faststream 社

 Faststream 社は個人所有の会社で、1999年に英国で人材斡旋会社として設立され、グループで海運及び海事・海洋関係の人材を扱っている。具体的には船舶管理会社、海運、船員、スーパーヨットの乗員、ガスや石油関係、舶用品、造船などの技術者や営業マン、さらには経営者なども含め幅広い人材を扱っている。昨年度はおよそ1500人を世界の54ヶ国に送り出したという。Faststream 社のオフィスはサウザンプトン(英国)、ヒューストン(米国)、シンガポールにあり、およそ120人を超えるスタッフがこれらの地域で活動している。

 

「船員が陸上勤務に転職することに関する意識調査」レポート

 このレポートのタイトルは“M a r i t i m e Executives – your thoughts-” Sept 2017である。また“This is the first report which gets beneath the surface to discover what maritime leaders really think” とある。以下がその再構成した内容である。
「キャリアの選択は多くの場合想定に基づいているが、この報告書の目的は、事実はどうなのか、海事・海洋関係の従業員はどのように考えているのかを知ることである。
 海事セクターで働くことは極めて幅広くその職種は多様である。スタッフは世界の船を安全に、効率的かつ収益性を確保しつつ、海上や陸上で運航しなければならない。そのためには適切な教育訓練をうけ技術的な知識と必要な商業的センスを持つ必要がある。どの業種でも、役割に必要なスキルは多岐にわたる。創造性を必要とするもの、技術的な問題の解決に焦点を当てる能力、あるいは商業的センスが求められる。
 しかし、他の多くの業種と違い海事セクターでは海上勤務経験があり、最先端の知識を身に着けたスタッフに多く依存している事実がある。これは海運会社で働いている元船員のことのみを取り上げているわけではない。海事に関わる専門的な多数のサービスを提供する企業体は船長・航海士或いは機関長・機関士として得た知識を陸上で活用している。保険会社、シップ・ブローカー、検査官、海事弁護士や造船家が必ずしも海上勤務を経験する必要は無論ないが、企業内の元船員の幾層にわたる知識や経験から恩恵を受けているのは事実である。
 しかし、船員や陸上スタッフは互いにこのことを理解しているだろうか? 船員が陸上に転職することを決めようとする時、彼らに可能性のあるキャリアパスについてどの程度理解しているだろうか。彼らは給与について現実的な理解をしているだろうか。海事の専門家として、どこにもっと最適な機会があると知っているだろうか。船員経験者は良き陸上スタッフとなれるのだろうか?
(1)主な調査結果  昨年の夏、Faststream 社は自社に登録している海事関係専門職に彼等自身のキャリアと彼等自身が選択した職種についてどのように考えているのか、また同業他社の専門職はどの程度報酬を得ていると思うのか聞いてみた。Faststream 社は彼がその選択について後悔していないのか、あるいはどこにベストな機会があったのか、欧州をベースとしている彼等はアジアにベースがある同僚との待遇・給与の差はあるのか、それはどの程度なのか、海事関係の職とはいっても船員にとって取っ付き難い職種はなんであるのか、知りたいと思ったのである。
 2000人以上が回答を寄せ、そのうちの823人は現在海上勤務をしている。調査の結果は誠に興味深いものであった。
① 回答者の69%がもう一度職業選択の機会があっても再度船員になりたいと回答したが、甲板部の職員に関していえば半分に満たなかった。
② 海事関係の陸上の職場においては、92%の回答者が自分の職場に船員の経験を持った社員がいることが「かなり重要」だと回答し、35%の回答者はビジネス遂行上元船員の存在は「必須である」と回答した。
③ 機関部の職員の方が甲板部の職員に比較してはるかに簡単に陸上勤務の機会を見つけられると回答している。
④ 船員にとって魅力が最も低い(ハードルが高い?)陸上の職場は、海事弁護士事務所、シップ・ブローカー、海上保険業であった。
⑤ 今後10年間の将来を考えたときに、37%の船員が東南アジアが最も就職機会の多い地域であると回答した。

(2)船員の転職
 船員の85%は、彼らの職業生活の大半を海上勤務で過ごし、海から陸上への転職を考えないが、調査では、船員は、日々の職務において何らかの接触を持つ職業に興味を持っていることを示している。
 配船担当者、検査官、船隊管理者、そしてハーバーマスターは船員の職務に何らかの形でかかわっている。しかし、どの程度の船員がシップ・ブローカーや保険会社と関わることがあるのだろうか? 平均的な船員にとって殆ど関係のないものと思われる。しかし、実際には、これらの職業のすべては、オフィスで海上勤務経験者を必要としている。海上生活の実態を理解し、何が出来るのか、何が出来ないのか理解することは極めて重要なのである。船員としてのキャリアを逸れ脇道を歩くことには相当躊躇するであろうが、長い目で見ればそれは自身の職業生活にとって非常に有用であろう。
 海上に人材を求める海運関係の企業にとって重要なのは、一般の船員にとって彼らの業務内容が必ずしも良く知られていないことを理解し、その企業の主要なポジションを埋めるために元船員を探す場合は、船員が国際海運の仕組みや成り立ちを十分理解していないこと、また当該企業が具体的に何をやっているか理解されていないことも認識しなければならない。陸上職に転職しようとしている船員のために然るべきポジションを探す斡旋会社の担当者は適切な会社を見つけ、またそこで働くことがどのような機会を与えるのか丁寧にかつ十分に説明することが必要である。
 指揮命令系統のはっきりした職業につき、昇進や技術習得などについて定型的な試験やコースなどを受講することに慣れた船員にとって、陸上に転職すること、すなわち脇道に入り全く新しい一連の技術やスキルを身に着け、慣れぬ職場に入ることは極めて気後れし思い切った決断を要することである。
 また、多くの船員は、ロンドン、ニューヨークやシンガポールなどのような海運や海運関連事業の盛んな場所から来るわけでもないことに注意することも必要だ。彼ら多くはこうした都市からの遠隔地に生活の基礎を置いており、陸上勤務をすることは単に給与を直接家に持って帰ることだけを意味するのではなく、住居の移転やあるいは国外への派遣も意味していることである。したがって陸上に転職しようとしているヴェテランの船員のプールは自ずと限られている。
 しかし船員は今回の調査の結果によると海事関係の陸上の職場においては、92%の回答者が自分の職場に船員の経験を持った社員がいることが「かなり重要」だと回答し、35%の回答者はビジネス遂行上元船員の存在は「必須である」と回答したことに興味を覚えるに違いない。
 回答した船員の半分以上は、欧米人であれアジア人であれ、陸上で仕事を探すのは非常に困難だと考えている。もちろんこれはある程度、正しい。船員の全てが陸上職にチャレンジ出来るわけではない。陸上勤務は、通勤の苦労、税制の煩わしさ、職場でのかけ引き家族との生活、そして必ずしも明確でない職場の指揮命令系統などを考えると海上勤務の方がずっと楽とも思える。しかし海上勤務一筋ではなく、他の職業環境にも興味のある船員や複雑な技術的な問題を他の人々に分かりやすく説明出来るような能力を持った船員は彼等の技術や技能が高く評価され、需要があることに気が付くであろう。
 機関長・機関士は船長・航海士と比較して陸上の仕事が見つけやすいと考えているが(53%対 39%)、これはかならずしも現実を反映していなくて、実際はどちらも同じように大きな需要がある。
 適切な心構えと十分な能力をもった船員ならば機関・航海の別はなく雇用の機会はある。唯一の違いは、機関士の陸上におけるキャリアパスはより明白であるということである。転職を考える船長・航海士はよく調べて、雇用市場に膨大な海事関連の職種があることを知らなければならない。過去12ヶ月にFaststream 社は、多くの航海士を業務内容のはっきりした職種から、幅広く少々内容の曖昧な職種までの陸上職に斡旋した。
 私たちの調査に答えた1200人の陸上の海事専門職は、元船員は一般的に良いスタッフとなると評価し、わずかに5 %は元船員が職場に適応するために苦労していると述べている。そして、3 分の1 は、元船員は、職場での初期のサポートが必要であると指摘した。多数の元船員を陸上職に斡旋した経験を持つFaststream 社が言えることは、従業員に対する優れたサポートとトレーニング・プログラムを持っている企業が長期的にスタッフを繋ぎ留め、維持する可能性が最も高いものであることだ。
 誰がベストのリーダーになれるのか。調査によると船員経験者ではない。回答者の78%は、船員経験者はベストのリーダーにはなれぬと回答しているが、これは船内のボスと事務所のボスであることの大きな違いを示している。船内の環境は、陸上のオフィスの環境とは全く異なっている。船内では指揮命令系統は複数の管理階層で構成されいる。
 一方陸上では組織はますますフラットな構造と協働のチームワークによることが多くなっている。船内における生活は業務を着実に遂行することにあり、それには規則集があり、慣行があり、そしてこれらの規則を遵守することが最重要なのである。それに対して陸上では、特に管理職を目指すものは、自主性、自由な発想、そして起業家精神も必要である。これは重要な違いであり、元船員が自然に管理職になれるとは思われない。これは陸上職につくにあたっての一種のハンディキャップであろう。
 元船員の昇進についていえば、陸の上級管理職の60%は高級船員だからと言って陸の上級管理職になれるとは考えていない。海上での時間が陸上での営業活動のような時間と匹敵するような時間であるかどうかが問題である。最高管理職への道はやはり営業畑のような職歴が有利であるのは事実である。
 企業管理職に昇進するためのもっとも需要な資質は何だろうか。調査レポートは経験の重要さを真っ先に挙げているが、もちろんこれだけではない。管理職からの回答は個人のもつコミュニケーション、語学力、リーダーシップ、ファシリテーションなどのソフトスキルと個人の人格を強調している。そして集中力、理解力、創造性、態度、積極性、献身、持続性、柔軟性、問題解決力と忍耐などはすべて重要な資質として挙げられている。言うまでもなく海事分野の上級管理職はスーパーマンではないので、これらの全ての資質を兼ね備えていることはない。
 これらの資質の具体的な形として上級管理職になるために必要な能力について管理職に評点をつけてくれるように依頼した。結果はレジリエンス注が、明確なトップ(55%)で、起業家精神(35%)そして人望(14%)と続いた。将来の管理職への昇進を目指すもの、あるいは海上にあって今後陸上の管理職への転身を志す者はこれに十分留意しておく必要がある。
 船員が陸上に転職を試みるとき船員のための組織化された訓練と開発プログラムの欠如についてはこれまでも多くの報告がなされている。これは、将来陸上において管理職となりうる船員の可用性に大きな影響を及ぼしている。回答した管理職の43%だけが、すでに将来の管理職になることができる人材がいると答えている。人材斡旋会社としてFaststream 社もおなじ状況であるとみている。つまるところ海事分野において人材は営業畑や労務畑など従来のルートだけでは必要な人材を賄えない。海事分野や海上の職員の能力の開発に努めなければならない。可能性のある人材はそこにあるからである。
 それが出来ないのであれば、結局は企業が多く依存している海上にある有能な人材を失うことになる。船員は将来の人材であり、企業の管理職はそれを認識している。
 将来の管理職を海上から獲得することに失敗したなら海事企業は他の産業分野から募集することになるのだろうか。管理職の73%はもちろん他の産業を当たるべきだと回答しているが、人材はどこから来るのであろうか。管理職たちは物流、航空、運輸そして海上土木などポピュラーな業界を挙げ、そこから引き抜くことだとしているが、現実にはこのようなことは起こりにくいと思われる。
 海事産業への女性の雇用と登用は常に話題とされる重要なポイントである。しばしば女性の船舶職員練習生をいかに多く確保するかが焦点となる。しかし海運業界は女性を惹きつけるために何かをしてきたのだろうか。回答した管理職の76%は何もしていないとしている。
 海運は女性の雇用について一般的に綺麗事を話しているが、実態はかなり違う。他の業界では今や性別は能力と全く関係ないとしているし、回答者の多くもそれを認識している。海運界は今や具体的な形で実施に移すべき時である。

(3)世界の海事センター  ヨーロッパおよびアジアにおいて国際的な海事センターの地位を巡ってこれまでにないほどの激しい競争が繰り広げられいるなか、海運業界対他の業界、船員対陸上スタッフの問題はさておいて、Faststream 社が斡旋した陸上職が次の十年間に最も条件のよい雇用の機会があると思われるのはどこかと尋ねたが、これは興味深い発見となった。世界の海事センターともいうべきロンドン、そしてコペンハーゲンおよびハンブルクは当然上位にあったが、トップになったのはある意味で不思議でもないが、シンガポール(ライオン・シティ)だった。数字を示すと36%がシンガポールがもっとも可能性があり、12%がロンドン、10%がコペンハーゲン、9 %がハンブルクそして5 %が香港を挙げた。その他の都市はいずれも5 %以下だった。
 確かにFaststream 社のシンガポール・オフィスは、2006年設立以来、グループのネットワーク内で最も成長率の高いところである。しかし、ロンドンはまだ間違いなく世界のトップの海事センターであり、少なくとも15,000人を雇用し、考え得る海事ビジネスのあらゆるタイプの業務を担っている。しかし、経営者や従業員の間での感覚は、アジア、それもシンガポールこそ世界の海事センターである。
“能力のある人材は能力のある人材を呼び込む” というが、シンガポールがまさにこのケースだ。ライオン・シティはかつて、企業のアジアにおける地域本部であったが、今や多くの企業の世界的な総本部となった。このためには多くの優秀なスタッフを必要としており、トップ企業はまたトップの人材を必要とし、それは好循環となり人材が集まるのだ。シンガポールは転職し、転居し住むのに魅力的な都市だ。アジアの船員の勃興とともに欧州や米国で働くにはVISA の取得が困難なこともあってシンガポールに職を求める船員も多い。シンガポールの優位性は当分揺らぐこともないと思われるのでVISA の問題がなくても他国では働かないだろう。

(4)給与  調査では10年から15年の海上経験を持つ航海士・機関士に対して陸上での給与について彼らは非常に過小評価していることがわかった。
 またアジアの給与水準について大きな誤解がある。アジアの賃金についての欧州および米国をベースにしている従業員の認識は現実からかなりずれている。欧州をベースとする従業員はその47%が、米国をベースとする従業員はその64%がアジアの従業員より高給を取っていると信じており、一方アジアをベースとする従業員の64%は、欧州の同僚より高給であり、69%は米国ベースの同僚より高給であると考えている。
 確かに米国での給与は高い。しかしアジアの技術職は欧州の同僚とほぼ同等の収入を得ているが、チャーター担当やシップ・ブローカーなどの営業職は、世界のどこよりも高い報酬を得ることが多い。
 また、陸上職に、世界で自分と同様な職務についている同僚の税引前のサラリーは多いと思うか少ないと思うか尋ねた。その回答はもちろん推測に基づくもので極めてバラつきのあるものであった。また営業職と技術職の間の相違は少なかった。
 この調査から多くの興味深い事実が読み取れるが、興味深い項目の一つは、同じ地域のスタッフが同僚の給与についてどう考えてるかである。米国及びアジアでは彼ら自身の給与に満足しているが、欧州のスタッフの43%以上が同僚はもっと高給を取っていると感じている。
 海運企業を経営することによるストレスの大きさと複雑さのため、上級管理職の報酬は他の業界の同程度の職位と比較しても高いのではないかと思うであろう。しかしながら上級管理職の多くは他の業界とは太刀打ち出来ないと考えている。わずか12%が他の業界よりよいと考え、49%はほぼ同水準であり、38%は劣ると考えている。
 彼等は別の業界ならもっと良い報酬を得ることができると考えており、それはあながち間違いではない。海事産業における管理職の報酬は全くばらばらで、それはどの会社で働くかによる事が多いし、またいわゆるノルマも殆どない。ある管理職は他の業界よりよい報酬を得ており、またそうでないことももちろんある。現実は、意味のある比較を行うことは不可能に近いということで、上級管理職の認識は、彼らの報酬は全く競争力がないと明確に考えているわけではないという事実だ。
 他の業界と比較して彼らの報酬は競争力がないと考えている上級管理職でも何かがすぐ変わると考えているわけではない。次の2 年間でどんな変化が予想されるかと質問したが、67%は現状維持であろうとし、17%は増加、16%は減少すると回答した。」

 

レポートに対する若干のコメント

 調査レポート本体はいずれIFSMA を通して入手したいと考えているが、全文を読むことが出来なかったのが残念である。海上職員と陸上職員の給与の違いなどをもう少し明確な形で知りたかった。また元船員の転職先なども具体的な職種の割合などを知りたかった。はじめにも書いたように、この調査は主として英国を始め欧米人を対象として行ったものと思われるが、国籍別の回答者などのブレークダウンなども欲しかった。
 またこの調査は人材斡旋会社が実施したものであるから、まず船員が陸上への転職を考えなければ前に進まない。そのため陸上において海上勤務経験者が高く評価され、雇用の需要が多いこと、陸上の職業の魅力などにやや偏っている感じがしないでもない。しかし、この拙稿のタイトルとした「オフィサーはベストのリーダーになれないのか?」のように、陸上で管理職となるには、厳しい面もあることも指摘している。
 こうした調査はこれまでも幾たびか行われているが、直近の調査では2016年にMaritime London などの英国の海事関係機関が行った調査がある。これもLRO ニューストピックとして、本誌第435号(平成28年10月・11月号)に掲載されていることをお知らせして本稿を終わりたい。

(注)レジリエンス(Resilience Engineering RE)とは「危機に直面した際に、状況の変化を適確に把握し、柔軟な復元力を発揮して、しなやかに事故を回避し、システムの機能を発揮し続ける行動様式」 第92回 船長教養講座 「レジリエンス・エンジニアリングの現場への実装 - マニュアル管理の限界と現場力の創生 -」P.74

 

 

 


LastUpDate: 2024-Apr-17